共同研究および外部からの委託による調査当研究所の調査研究活動は、創立以来、研究所メンバーの個人研究、共同研究、外部からの委託調査などを包括して行ってまいりましたが、そのうち主要なものを挙げますと下記のようになります。 1.『ブラジル社会に対する日系人の貢献と役割』(JICA委託 1983年〜1984年) 2.『ドイツ系コロニアにおけるドイツ語教育に関する研究』(JICA委託 1985年) 3.『ブラジルにおける日系人口調査』(JICA委託 1988年〜1990年) 日本移民80周年記念事業の一環として、ブラジル全土にわたりサンプリングによる調査を、日本の統計専門家水野坦教授のもとに、IBGE(ブラジル地理統計院)の協力を得て実施し、これまで不明であったブラジル日系総人口128万人(当時)を明らかにすると共に、日系人の社会的経済的状況の実態も明らかにしました。 4.『ブラジル日本移民八十年史』(移民八十年史編纂委員会 1991年) 1988年の「日本移民80年祭」に際し、同祭典記念事業の一環として、日本移民八十年史の編纂刊行が計画されましたが、同史執筆の依頼を当研究所が受け、当所メンバーが中心になって共同執筆のもとに刊行されました。 5.『ブラジル日系人の意識調査』(国民性調査委員会との共同研究 1992年) 「日本の国民性」の調査を五年毎に実施している林知己夫教授は、その比較研究のため、ハワイ日系人の意識調査を実施しましたが、さらに同様のブラジル日系人の意識調査を当研究所とともに実施し、日本の日本人、ハワイの日系人との意識的差異を明らかにしたものです。 6.『ブラジルからの日系人本邦就労の実態と日系社会へ及ぼす影響に関する研究』(日本国外務省委託 1993年) 7.『ブラジル日系社会における日本語教育-現状と問題点』(日本国外務省委託 1997年) 8.『ブラジル人の人種偏見の新側面-特にアジア系移民グループを中心として』(森幸一専任研究員とJeffrey Lesser教授による共同研究 1999年〜2000年) ゼミナールの開催ブラジル・日系社会についての研究発表・討論のゼミナールが、 当研究所の主催により今日まで150回以上実施されてまいりましたが、特筆すべきは、二・三世日系人を対象に、1982年10月より8回にわたって、サンパウロ大学ブラジル研究所教授ノゲイラ女史を講師に迎え『ブラジル現代史における日本移民』をテーマとする連続公開講座を、旧南銀講堂で開催したことです。 この講座の内容は、後日当研究所により、ポルトガル語で刊行されました。 シンポジウムの開催1.『ブラジル移民60年 ブラジルとサンパウロの日系人』(サンパウロ大学と共催 1968年) 日伯の両側面から、日本移民・日系ブラジル人の在り方を総合的に検討。その内容は日伯両語で刊行されました。 2.『ブラジル社会・経済・企業環境』(日本商工会議所と共催 1974年) 当時急増していた対ブラジル進出企業を対象としたシンポジウム。その内容は日本語で刊行されました。 3.Simpósio sobre os 70 anos da imigração japonesa no Brasil(外務省との共催 1978年) ブラジルの代表的な研究者に加え、米国およびカナダの学識者を招いて開催。その内容はポルトガル語で出版されました。 研究例会の開催2008年から復活した本事業は、内外の研究者を招き、その研究成果を一般に発表するもので、復活以来の研究例会は次の諸氏により開催され、今日に至っております。 第1回 オンサが生きる湿原の危機-ブラジルパンタナール丸山浩明 立教大学教授 2008年5月 第2回 遠きにありてつくるもの細川周平 国際文化センター教授 2008年8月 第3回 万葉集と私脇坂ジェニー 元USP教授 2008年9月 第4回 聖州近郊農業の方向性について田中規子 JATAK研究員 2009年2月 第5回 インディオの世界を垣間見て細川多美子 雑誌編集長 2009年7月 第6回 農業と食と健康続木善夫 有機農法創始者 2009年9月 第7回 これからの日系社会深沢正雪 ニッケイ新聞編集長 2010年2月 第8回 福博村の75年大浦文雄 福博村永代村長 2010年5月 第9回 移民史料館の現状と将来栗原 猛 移民史料館運営委員長 2010年7月 第10回 変容する日系社会三田千代子 上智大教授 2010年9月 第11回 日系ブラジル文学雑感細川周平 国際文化センター教授 2011年2月 第12回 日系ジャーナリストの見た日系社会保久原ジョルジ エスタード紙論説委員 2011年6月 第13回 日系人定義の変容とNikkeiアイデンティティ小嶋茂 早大移民エスニック文化研究所研究員 2012年8月 第14回 アマゾン奥地の日本人 ―おもにマウエスを事例に―丸山浩明 立教大学教授 2012年11月 第15回 ブラジル移民の文学史細川周平 国際文化センター教授 2013年4月 第16回「埋もれた声」の蘇生のために-日系移民のオーラルヒストリー再生プロジェクト―森本豊富 早稲田大学教授 朝日祥之 国立国語研究所准教授 2013年8月 第17回 在日日系ブラジル人家族の健康管理と輸入感染症の現況三浦左千夫 日本赤十字社特別研究員 2013年11月 第18回 昭和新聞と川畑三郎-“勝ち組の頭脳”に目された人物-前山隆 元静岡大学教授 2014年2月 第19回 アルゼンチン一世の文学活動―増山朗の『グアラニー森の物語』を中心に細川周平 国際日文研センター教授 2014年7月 第20回 窓としての短歌 ―ブラジル移民の「われ」とその表現松岡秀明 大阪大学教授 2015年3月 第21回 ブラジル人女性移住者と継承語教育拝野寿美子 神奈川大 日本におけるブラジル人の子どもの教育達成竹ノ下弘久 上智大 2016年11月 第22回 三島由紀夫のブラジル体験杉山欣也 金沢大教授 2017年2月 第23回 日系バイリンガルの育て方松田真希子 金沢大学准教授 2017年10月 第24回 言語政策理論から考える日系人のことばのデザイン福島青史 国際交流基金サンパウロ日本文化センター日本語上級専門家 2018年3月 第25回 日本で外国籍の親と暮らす子どもの高校在学率について ―2010年国勢調査データを用いた国籍間・都道府県間の比較―鍛治 致 大阪成蹊大学准教授 2018年3月 コロニア今昔物語2009年から新規事業として始めたこの企画は、従来あまり採りあげてこなかったコロニアの庶民文化を紹介し、記録として後世に残すもので、今日までに実施されたものは下記の通りです。 第1回 日本語放送の思い出石崎矩之(元ラジオアナウンサー) 2009年6月 第2回 私と手品津野豪臣(医師、元日文連副会長) 2009年8月 第3回 コロニア文学における鈴木南樹、古野菊生、武本由夫の存在安良田済(文芸評論家) 2009年10月 第4回 肖像写真から見たコロニア松本浩治 サンパウロ新聞編集次長 2010年4月 第5回 力行会の播いた種永田 久 「のうそん」誌編集長 2010年8月 第6回 人間生活空間としての移民船根川幸男 ブラジリア大学準教授 2013年1月 第7回 ブラジル音楽とその道の日系パイオニア坂尾英矩 音楽評論家 2013年5月 第8回 カザロンデシャーの復元と保存活動中谷哲昇 陶芸家 2013年10月 第9回 日伯農業協力の歴史 ―大豆を中心として―山中イジドーロ 農業技師 2013年12月 第10回 ユババレエと私 ―ブラジルに渡って50年―小原明子 弓場バレエ団指導者 2014年8月 第11回 ブラジルにおける和食の動向高橋ジョー 道クルツラル代表 2014年11月 第12回 サンバ、カーニバル、エスコーラ・サンバってなに?細川多美子 当所理事 2015年1月 第13回 ロリータファッションとカワイイ文化の発信松田明美 ブラジル・カワイイ大使 2015年4月 第14回 老いへの道吉岡黎明 前救済会会長 2015年8月 第15回 コチア青年がブラジルと日系農業に果たした役割黒木慧 コチア青年 2015年9月 第16回 翻訳から見た日本語の特質後藤田怜子 翻訳家 2015年10月 第17回 ブラジル日本移民史料館の現状と展望山下リジア 同館運営副委員長 2015年12月 第18回 共催史料館 着物とブラジル吉積俊子 JICAシニアボランティア 2016年4月 第19回 共催史料館 水野龍展と私-その上を流れた時間と人々-大浦文雄福博村顧問 カフエパウリスタに魅せられて若林あかね 映像作家 2017年1月 第20回 光を放った男達―ブラジル工業移住者の足跡―小山昭朗 元ブラジル工業移住者協会会長 2018年1月 史料の収集・保存とデータベース化1.図書史料日本人移住史・日系社会についての史料の組織的な収集・整理・保存は、当所創立のはじめより継続して行われております。 1978年に完成した「ブラジル日本移民史料館」の設立には、当所は故斉藤広志や故半田知雄が専門の立場から協力し、その実現に大きな役割を果たし、初代館長には斉藤が就任して、史料室の設備、史料の分類システムに努力してまいりました。 なお、当所に現存する史料・文献の保存・整備については、2007年より2年間JICA青年ボランティア横尾悦子司書の協力を得て、データベース化が完成し、目下当研究所のサイトにて公開中であり、内外の研究者の便宜に供しております。 データベース化された史・資料の内訳 日本語による移民史料・・・・・・・・・・ 3,503冊 日本語による一般図書・・・・・・・・・・ 746冊 合計4,249冊 日本語以外の言語による移民関係図書・・・ 666冊 日本語以外の言語による一般図書・・・・・ 777冊 合計1,443冊 日本語による雑誌(移民資料を含む)・・・ 1,369冊 日本語以外の言語による雑誌・・・・・・・ 約300冊 合計約1,700冊 他に未整理の外国語図書・・・・・・・・・ 約3千冊 2.文書史料今日までに整理された主な史料は、日本語教育史料のほかに個人史料として、安良田済、内山勝男、沖本磯満、尾関興之助、河添清、清谷益次、後藤武夫、斉藤広志、鈴木貞次郎、中尾熊喜、中隅哲郎、楡木久一、半田知雄、増田秀一があります。 また、2014年3月より、学習院大学アーカイブズ学専攻の青木祐一氏により、アーカイブズ学的手法に基づいた文書史料の調査・研究が行なわれております。この調査では、寄贈者ごと史料群の概要を把握し、史料の保存と公開に向けた検討を行ないます。これにより、当所所蔵の文書史料のさらなる利活用の道が開かれることが期待されます。 3.音源史料また、1970年代から80年代にかけて、講演や対談などを記録した音源資料が当研究所に所蔵されており、2013年度中、宮坂財団の援助の下、デジタル化の作業が行なわれました。この作業はプロジェクトメンバーの長尾直洋氏により遂行されました。このコレクションは、273本のカセットテープ(159タイトル)からなるもので、今後これらのデータを研究活動に有効活用するための整備がなされることになっております。 創立50周年記念事業当研究所は2015年3月をもって、ようやく創立50周年を迎えることができました。よって、理事会ではこの半世紀の間、幾多の試練や困難を重ねながら地道な活動を続けてきた当所の50周年を記念し、目下下記のような事業を企画しております。 1.多文化社会ブラジルにおける日系コミュニティの実態調査今日の先進的多文化社会ブラジルを構成する明示的で具体的な好例として、ブラジルの日系コミュニティがどのような社会・経済・文化活動を行い、それが各地域社会においてどのような役割を果し、影響を及ぼしているのかを、変容の過程を辿りつつフィールド調査を行ない、「日系」の存在感の把握を試みることを目的としております。(細川理事担当) 2.人文研50年史・年表の刊行人文研の過去50年に亘る歩みを振り返り、先人の辿ってきた足跡を記録し、今後の指標とするもので、日ポ両語による50年史、及びその基礎作業となる日本語による年表の作成を夫々計画しております。 本事業は、日語-高山理事、ポ語-本山理事長の主宰の下、JICA青年ボランティア長尾直洋氏の協力も得て昨年度から実施され、本年度は、日語は資料による戦後の記述を行い、ポ語は引続き史料の閲読を続けていく方針であります。 (最終更新日:2018年10月23日) |