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人文研60周年を迎えて─保存と近代化

保久原 淳次 ジョルジ1

 現在の名称で1965年3月に正式に設立されたサンパウロ人文科学研究所(通称:人文研、ポルトガル語正式名称:Centro de Estudos Nipo-Brasileiros、CENB2)は、正式な存続期間である60年よりも長い歴史を持っている。

人文研は、第二次世界大戦終結直後、ブラジル在住の日本人知識人グループが、同胞の置かれた状況を憂慮したことから生まれた。土曜日に集まっていた非公式なグループ(そのため土曜会と呼ばれた)から、やがて「サンパウロ人文科学研究会」が誕生し、これが現在の人文研の前身となった。

土曜会創立20周年記念集会での乾杯の様子
『土曜会創立20周年記念アルバム』より
(1966年5月、人文研 所蔵)

 人文研に関わる学者、研究者、ジャーナリスト、作家、芸術家たちは、ブラジルにおける日本人とその子孫に関するさまざまな側面について、論文、書籍、調査報告書、分析を数多く生み出してきた。

協力者および研究者の中には、アンドウ・ゼンパチTeiichi Suzuki Hiroshi Saitō 半田知雄脇坂勝則Prof. Takashi Maeyama 、三田千代子、Kōichi Mori、本山省三らがいる。挙げれば枚挙にいとまがない。

左から斉藤広志、アンドウ・ゼンパチ、
増田秀一、河合武夫。
『土曜会創立20周年記念アルバム』より
(1966年5月、人文研 所蔵)

 人文研のメンバーの多くは、ブラジル日本移民を知り理解するために不可欠な著作 Uma Epopeia Moderna – 80 Anos da Imigração Japonesa no Brasil3  (São Paulo, 1992, Editora Hucitec/Sociedade Brasileira de Cultura Japonesa)の編纂に参加した。また、ブラジル日本移民研究に欠かせないもう一つの著作、半田知雄著 O Imigrante Japonês – História de sua Vida No Brasil4 (São Paulo, 1987, T. A. Queiroz/Centro de Estudos Nipo-Brasileiros)の出版も人文研の主導によるものである。さらに、『ブラジル日系人人口調査』(1987-1988年)は、JICA(国際協力機構)の委託により人文研が実施した業績である。これはブラジル日本移民80周年記念事業の一環として行われた標本抽出による統計調査である。

人文研が刊行・編纂に関わった主要文献の一部

 ブラジルにおける日本移民研究と、移民を受け入れた国の発展における移民の役割の解明に関心を持つ人々や機関の支援により、研究者たちは人文研の所蔵資料を形成することができた。
その中には、他の機関では入手できない文書、書籍、刊行物、情報が含まれている。資料はこれらのテーマを研究する全ての人々に公開されている。人文研を訪れるのは、主に学術的な研究に不可欠な文書資料を求める、ブラジル内外の研究者たちである。

 技術の進歩を見据えながら、人文研はできる限り、さまざまな研究者が所蔵資料にオンラインでアクセスできるよう努めてきた。これは単にデジタル時代に適応するだけでなく、その歴史を通じて行ってきたように、関心を持つ全ての人々が、長年蓄積してきた文書資料を閲覧できるようにすることを目指している。
これは継続的な取り組みであり、設備の近代化だけでなく、考え方の刷新も必要となる。その取り組みの一つが、人文研資料にアクセスできる新しいデジタルプラットフォームである。

リニューアルされた人文研サイトおよびデータベース

 多岐に渡る専門分野の、ブラジルおよび国外のさまざまな教育機関に所属する、多様な関心と問題意識を持つ研究者たちが絶えず人文研を訪れることは、当研究所が創設者たちの思い描いた役割を果たし続けていることを示している。

 創立60周年を迎える年、人文研は、サンパウロ州、マットグロッソ・ド・スル州、ミナス・ジェライス州トリアングロ・ミネイロ地域を管轄する在サンパウロ日本国総領事による初めての訪問を受けた。
2025年8月12日の人文研への清水徹総領事の訪問は、人文研にとって「驚き」であり、同時に「認識」を得る機会となった。人文研の理事会が驚いたのは、総領事による本部訪問が初めてだったということだけではない。外交官自身が所蔵資料を見たいと申し出たことも予想外だったのである。そして同時に、清水総領事による人文研所蔵資料の重要性と、人文研が創立以来行ってきた活動への認識でもあった。
訪問後まもなく外務省により別の国への転任を命じられた清水総領事は、後任者に対し、ブラジルにおける日本移民とその子孫の役割を理解するために人文研を訪問することを任務の一つに含めるよう助言したと伝えてくださった。

清水総領事による訪問、人文研書庫資料を閲覧
(2025年8月、サンパウロ人文科学研究所)

 おそらくこの助言こそが、人文研の目的が何であったのか、何であるか、そして今後も何であり続けるかを象徴している。この目的を達成するために人文研は活動してきた――そして、数十年にわたり支えてくださった人々や機関の支援を得て、今後も活動を続けていく。

(サンパウロ、2025年10月16日)


  1. Presidente do CENB (2023-2026) ↩︎
  2. Centro de Estudos Nipo-Brasileiros(ポルトガル語)の略称。日本語では「サンパウロ人文科学研究所」から「人文研(ジンモンケン)」の愛称で呼ばれる ↩︎
  3. 原書『ブラジル日本移民八十年史』(移民八十年祭典委員会 ; ブラジル日本文化協会、1991年) ↩︎
  4. 原書『移民の生活の歴史 ブラジル日系人の歩んだ道』(サンパウロ人文科学研究所発行、1970年) ↩︎

本記事の原文はポルトガル語である。
A versão em português deste artigo está disponível aqui.

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