その沿革と現状
人文研の勉強会は、2007年、当時移民史料館のJICA派遣シニアボランティアとして勤務していた中村茂生氏の提唱によって誕生した。
第1回は、同年10月やはり当時当研究所の客員研究員として在籍中の長崎シーボルト大学教授関谷融氏によって行われた。爾来、勉強会は不定期に開催され、日本語による発表を原則としているが、ポ語による発表は通訳をつけ、すでに19回を数えて今日に至っている。
勉強会における発表の資格については、大体日伯両国の大学院研究生を中心とし、それに類する学生などを対象とし、テーマについても両国における移民関連のものを採りあげるようにしている。
今後の展開
本勉強会は、若手の研究員や学生の日頃の研究を発表する機会を提供するためのもので、その性質上非公開とし、参加者もできるだけ若手の層や学生を対象としているが、テーマや発表資格の関係からか、両国の言語に通じたいわゆるバイリンガルの若手の集いという性格を持つに至っている。
当研究所は、目下新しい時代の変化や要望に対応するため、その理念や目的・事業・組織・人事などの改革の必要に直面しているが、この勉強会に参加するバイリンガルの若手層は、将来、当研究所の研究や運営の中核となる有力な人材として期待されるのではないか、と思料する。
来年度の新体制による発足に当たり、本勉強会を今後本格的な人文研事業として認知するとともに、さらなる発展・拡充を新しい執行部に期待するしだいである。
実績
2007年
第1回 10月20日 「教育評価と指導」
関谷 融 長崎シーボルト大教授
第2回 11月8日 「水野龍とは何者だったのか」
中村茂生 JICAシニアボランティア
第3回 11月28日 「戦前ブラジルの日本人子弟に対する日本語教育論」
伊志嶺安博 広島大大学院生
第4回 12月7日 「小説『琵琶歌』が映し出す部落差別と世相」
藤原 望 東京経済大学生
2008年
第5回 3月6日 「移民的徳と移民知識人・人類学的探求のための覚書」
佐々木剛二 東京大学大学院博士課程
2009年
第6回 6月16日 「人文研書誌情報について」
横尾悦子 JICA青年ボランティア
第7回 7月23日 「1933年当時のノロエステ沿線在住日本人及び日系人の状況」
鈴木奈緒 明治大学大学院生
第8回 10月20日 「ブラジル労働法と外国移民」
古杉征己 マッケンジー大学院生
2010年
第9回 1月28日 「初期韓国移民と日系社会との関りについて」
松阪健児 USP歴史学科学生
第10回 4月29日 「小林美登利と聖州義塾」
小林成十・真登 USP工学部大学院卒
第11回 7月8日 「イグアッペ周辺の日系農業技術」
小林ブルーナ 当所奨学生
第12回 8月19日 「日伯関係における人種偏見」
山田エドワルド 当所奨学生
第13回 10月21日 「日本の移民政策についての一考察」
吉田 満 当所奨学生
第14回 11月18日 「田原春次とは何者か」
藤原望 大阪市大大学院修士課程
2011年
第15回 4月14日 「日本における『日系ブラジル人』の社会的位置の変遷」
蕪城恵美里 名大大学院博士課程
第16回 6月9日 「在日日系人児童に対する日本語教育」
末永サンドラ 早大大学院修士課程卒 日本語教師
第17回 7月14日 「戦前期ブラジル派遣教員と日系移民子弟教育」
根川幸男 国際日本文化研究センター客員研究員
第18回 8月30日 「ブラジルを目指した女性たち」
名村優子 立教大大学院博士課程
第19回 9月22日 「対伯移民政策の歴史的経緯について」
吉田満 当所奨学生
2012年
第20回 1月31日 「水野龍の移民思想」
中村茂生 早稲田大学移民・エスニック文化研究所客員研究員
第21回 2月28日 「ブラジルと日本の間を行き来する子供たちの教育問題」
山本晃輔 阪大大学院生博士課程