2012年度通常総会のご報告
terça-feira, 17 de abril de 2012

2012年度通常総会が3月21日、当研究所にて開催されました。総会の席上、2011年度事業報告および2012年度事業計画案が発表され、また新しい理事会も選出されました。以下に一部をご紹介いたします。

2011年度事業報告書

1.「日本移民・日系社会史年表」増補版の編集と刊行
 本年表は本編の1995年刊行以来2010年までの増補版として、その間の日系社会の解体や変容、日本への就労者の激増、内外の注目を集めた日本移民100年記念祭など、96年から2010年に至る足跡を記録するために企画され、約10ヶ月間に及ぶ編集者をはじめとする関係者の努力によって完成された。(出版記念会

編集   専任 ― 神田大民 常任 ― 深沢雅子・大久保純子 
監修   脇坂勝則 宮尾進 田中慎二 鈴木正威
出版記念会 12月13日 

2.若手研究者養成のための奨学制度の継続・実施
 2009年度に発足した本事業は、その後も篤志家の支援によって順調に推移し、第1期奨学生4名の論文集を刊行する他、新規2名の奨学生を加えて、月1回の教官との懇談会や随時の連絡により、それぞれの研究テーマについての指導・助言を重ねることによって一応の成果を挙げることができた。

指導教官   本山 省三 (当研究所理事長 USP歴史学教授)
         菊地 保夫 ( 〃 副理事長 USP社会学博士)
 
第1期奨学生
  吉田満  (USP歴史学科)   日本の移民政策についての一考察
  小林ブルーナ(UNESP農学部)  イグアッペ周辺における日系農業技術
第2期奨学生
  白丸ライース(カスペルリベロ大)100周年記念祭とポ語による日系メディア
  比嘉コージ(SP社会政治学院)宮沢ジュリオ作品における日系人のイメージ

3.シンポジューム「人文研を考える」の開催
第1回 8月 日本語の部
 パネリスト  園田 昭憲 (県連会長)
        久保ルシオ (通訳・公証翻訳人)
        西岡 信之 (伯国三菱重工業社長)
第2回 10月 ポ語の部
 パネリスト  中野 慶昭  (元州財務長官)
        渡部 和夫  (元州高裁判事)
        佐藤  直  (USP薬学部教授)
第3回 12月 総括討論
 当所役員及びパネリスト参加者・外部識者計26名による
 参加した主な識者 平野セイジ、渡部和夫、大原毅、久保ルシオ、西尾ロベルト、吉岡黎明、山下リジア、オズワルド・フィダルゴ

本シンポジュームの実施によって、大要以下のような意見が集約された。

 1.理念と事業 ブラジル社会への一層の統合を図るとともに、従来の研究・調査分野である、移民史・日系社会・日伯交流に加え、新たに日本文化の研究・調査・紹介、サイトの拡充などが必要である。
 2.研究者 若手の研究生には日伯のバイリンガルを起用し、従来のボランティアに代わる専門家の集団とするのが望ましい。
 3.財源 段階的にOSCIP(公共利益市民組織)または財団法人化を目指す。
 4.人事 理事会には日伯双方の領域に対処できるバイリンガルの人材を起用する。

4.出版事業
7月 第1期奨学生4人の期末論文集第1期奨学生4人の期末論文集(ポルトガル語)
 小林ブルーナ 「日本人移民揺籃の地―リベイラ河流域における日本移民小史」
 山田エドアルド「ブラジル日本移民への差別と偏見―歴史研究の試み」
 柴田 夏美  「近代における「存在」の意義―日本の対伯移民政策を事例として」
 吉田 満   「日本の対伯移民開始までの歴史的経緯」
 レイアウト担当 田中理事
その他当会が編集に協力したもの。
 移民史料館編 写真集「戦前活躍した移民船」

5.資・史料の分類・整理 
 昨年度に引き続き、本年度も新規に寄贈のあった移民史料の分類とデーターベース化を行うと共に、次の史料や図書の分類・整理を行った。
 半田資料
 テープ資料のデジタル化(未完)
 日本語以外の言語による移民関係図書シールの貼り付け
 移民関係日本語雑誌の整理と登録
 本年末までにデーターベース化された史料・図書は次の通りである。
 日本語による移民史料        図書 3,402冊
                       雑誌 1,037冊
 日本語による一般史料        図書 1,899冊
 日本語以外の言語による移民・一般図書 2,206冊


6.企画とイベント
 本年度開催された各種の企画行事は次の通りである。
1.研究例会 
2月 第11回 「日系ブラジル文学雑感」
               細川周平 国際日本文化研究センター教授 
5月 第12回 「二世ジャーナリストの見た日系社会」 (ポルトガル語)
               保久原ジョルジ エスタード紙論説委員
2.勉強会
4月 第15回 「日本における『日系ブラジル人』の社会的位置の変遷について」
               蕪城恵美里  名古屋大学大学院博士課程
6月 第16回 「在日日系人児童に対する日本語教育」
               末永サンドラ 早大大学院修士課程卒
7月 第17回 「戦前期ブラジル派遣教員と日系移民子弟教育」
               根川幸男  国際日本文化研究センター客員研究員 
8月 第18回 「ブラジルを目指した女性たち」
               名村優子 立教大学大学院博士課程
9月 第19回 「日本の対伯移民開始までの歴史的経緯」
               吉田満 第1期奨学生 USP歴史科
3.共催 サンパウロ大学日本文化研究所
 9月 神奈川大常民文化研究所セミナー 「ひと・もの・暮らし~常民のみた日本」


2012年度事業計画書

1.委員会の設置(人文研内外のメンバーによって構成され、研究所の将来を検討する)
 a) 活動分野の拡大(研究、学位取得制度、広報活動、サービス等)。
 b) OSCIPないしは財団への組織変更。またそれに伴う定款の見直し。
 c) ビッグプロジェクトの立案と助成金獲得への方策検討。

2.奨学生制度の継続
 a) 現奨学生(四名)継続。(6月まで)
 b)次期三名の新規奨学生募集。(6月)
 c)新たなる奨学金支援者の募集。

3.人文研史資料のより有効な活用
 a) (主に日本から)研究者を誘致する。
 b)代表的な資料のポルトガル語への翻訳。

4.(他の事業に差し支えない範囲内での)出版活動
 a) 紀要第八号
 b) 奨学生期末論文集
 c) 人文研叢書
  a) 評伝「アンドウ・ゼンパチ」 執筆者 古杉征己
  b) 評伝「半田知雄」 執筆者 田中慎二
  c) “Sob o signo do Sol Levante – uma história da imigração japonesa (1908-1941), vol. 1”  執筆者 本山省三、日本語への翻訳
 d) 田中慎二作品集

5.ポルトガル語への翻訳事業の計画
 a) 日本文化に関するもの。
 b) 小説全般。

6.イベント
 a) 研究例会
 b) コロニア今昔物語
 c) 勉強会
 d) ブラジルへの移民の現状と将来を扱ったシンポジウム

7.研究活動
 a) ブラジルにおける日系社会の実態調査

8.サイト(常に日・ポ語で)
 a) 新着図書案内
 b) 「ブラジル日本移民」コーナーの拡充
 c) 日本および日系ブラジル研究に関心を持つ人たちのソーシャルネットワーク構築
 d) その他

理事会 任期2年(12年4月より14年3月まで)
 顧問        清谷益次 脇坂勝則 宮尾進
 理事長       本山省三 
 副理事長     菊地保夫
 第一常任理事  大原 毅 (新)
 第二常任理事  細川多美子
 第一会計理事  古杉征己 
 第二会計理事  高山儀子
 理事(順不同)  栗原猛
 理事        押切フラヴィオ (新)
 理事        西岡信之 (新)
 理事        松村照明 (新)
 理事        小林真登 (新)

 監査役 任期1年(12年4月より13年3月まで)
 (正)久保ルシオ 森脇礼之 丹羽義和
 (副)トッパン印刷 山本商会 フォノマギ 


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros