ブラジルに於ける日系人口調査報告書 -1987・1988-
quarta-feira, 19 de dezembro de 2012

人文研が今までに行った研究活動の中でも最も規模の大きなものの一つは、1987年から1988年にかけて実施された日系人口調査でしょう。そして、この調査結果報告の一部をサイト上にて公開できましたことをお知らせいたします。

ある特定の国の人口に関する正確かつ信頼出来るデータを収集するというのは並大抵の作業ではありません。そのことを考えると、ブラジルのような広大な国に散らばる少数の移民に関する統計を作成することの困難さが思い量れるはずです。

1988年の調査が行われる以前にも、ブラジルにおける日系人口の数を知ろうという試みは幾度かなされました。その中で、最もよく知られているものが、1958年に鈴木悌一USP教授(日本文化研究所創立者)を中心として行われたものです。この調査はブラジル日本移民50年祭の記念事業と相成って実施されました。当初、移民50年史を作成する計画がなされ、そのための準備に取り掛かっていた鈴木教授は、基礎となる統計資料がほとんど存在しないことに気付きます。それを契機として6年におよぶ大プロジェクトが始まりました。それほど時間がかかった理由の一つとして、この調査が悉皆調査、つまり430万以上に及んだ調査対象一人一人に対してアンケートを行う、という手法で行われたということが挙げられます。(詳しくは「鈴木悌一」を参照のこと)

数年後、サンパウロ人文科学研究サークルが人文研として再スタートし、それに伴い研究の中心にブラジルの日系移民研究が据えられました。最初の専任研究員となった半田知雄氏は「移民の生活の歴史」(1970)の執筆に没頭し、その活動の中から移民の史料館を作る案が生まれました。また、同じ経緯から日系人口調査を行うことも決定されたのです。

この度は、調査を行うにあたり日本外務省の統計局に所属しておられた水野担氏の協力を得ることができました。とはいえ、この調査に困難が付き纏ったことは言うに及びません。まず、一般に“日系人”と呼び慣わされている調査の対象を定義することから始め、どのような手法を採るべきか検討する必要がありました。予備調査の結果を考証の上、IBGE(Instituto Brasileiro de Geografia e Estatística-ブラジル地理統計院)の協力の下、ブラジル全国を対象としたサンプル調査が行われます。

この調査の結果、1988年7月の時点において、128万人(誤差±3000人)の日本人およびその子孫たちがブラジルに在住しているというデータが得られ、それ以後、信頼出来る統計情報として様々な文献に引用されてきました。

それから24年の月日が経過し、現在6世の存在も珍しくなくなる状況において同じような調査を繰り返すことは不可能となりました。そこで、現在の状況を把握ためにはIBGEの発表する人口増加率の指標に基づき推計を行う必要があり、2010年におけるブラジルの日系人口は160万人を超えたものと思われます。


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros