2013年8月3日。東京駅近郊の甲南大学ネットワークキャンパスにおいて人文研日本支部第一回研究会を開催しました。
本研究会は人文研日本支部を周知させるとともに、世代を超えた意見交換を行うことを目的に開催しました。参加者は約30名。ブラジル日本移民研究者だけでなく、企業、団体からも多数ご参加いただきました。
研究会冒頭、人文研栗原理事より、日本支部設置の目的と展望について参加者の皆様にご報告しました。報告内容を要約すると、第一に若手人材を育てること。第二に日本支部からブラジル本部への人材派遣を目指すこと。第三に会計管理を明瞭にするためNPO化することです。これに関して長年ブラジル日本移民研究をおこなってきた研究者から、「高齢からブラジルへ渡ることができず人文研の活動にも参加できなかった。今回の研究会が将来ブラジルと日本の架け橋となることを望む」とコメントをいただくなど、参加者の皆様からご理解、ご賛同のお言葉を頂きました。
研究会は、第一部・名村優子氏(立教大学文学研究科博士後期課程)による「1920-1930年代のブラジルにおける日本人移住地建設の理念と実態―アリアンサ移住地の事例から」、第二部・飯窪秀樹氏(国際日本文化研究センター共同研究員)「1930年代におけるブラジル移植民送出機関の活動状況―海外興業会社、海外移住組合連合会との関係から」の二部構成としました。
名村氏からはアリアンサ移住地にスポットライトをあて、植民者の思想と相関する初期移住の実態をご報告いただきました。飯窪氏からは日本における海外興業会社、海外移住組合連合会の資料をご提示いただくとともに、これまで語られてきた戦前移民送り出しに関する議論を再考するための新たな視覚をご提示いただきました。
総括討論は日本支部事務局長の中村茂生氏の司会で進められました。ブラジル本部と同じく、世代、職業を越えて活発な意見が取り交わされました。とりわけ日本の資料に光を当てた飯窪氏の発表に関する議論を通じて、ブラジル日本移民を研究する際に、ブラジルだけでなく日本の資料への目配りが必要であるという基本的なスタンスを改めて確認できたことは有意義であったと思います。他方で、飯窪さんからは「ブラジルに渡航したことがない者にとって、今回の会合は貴重なものであった。今度はブラジルの人文研へ訪問したいと思う」とのご意見を頂戴しました。
三田千代子氏、細川周平氏、森本豊富氏など人文研で活躍している大学の先生方はもちろん、大学生、大学院生など若手参加者もありました。研究交流するとともに、新しい人間関係を構築することができました。今後は年二~三回を目処に日本支部勉強会を開催いたします。活発な討論ができることを楽しみにしています。