着任のご挨拶
関屋弥生(当研究所客員研究員)
terça-feira, 22 de janeiro de 2019

サンパウロ人文科学研究所に2018年8月~2019年2月の期間、研究員として受け入れていただいている関屋弥生です。ブラジル日系社会で伝えられてきた芸能活動について調査を進めています。人文研にお世話になるのはこれが2回目で、前回は2017年に約3か月間、能楽の活動に焦点を当てて調査を行いました。今回は少し対象を広げ、歌舞伎や浄瑠璃などの活動についても、文献やインタビューをもとに調査活動を行っています。

演劇や文学、音楽など“表象”と呼ばれるものには多かれ少なかれ、その“表象者”である人物の意思や価値観などが表れているものだと思います。逆に言うと、そのような“表象”をつぶさに観察することで、その人物が置かれた状況や、あるいはその状況下でその人物がどう感じ、どう行動しようとしたか、というのが浮かび上がってくるということでもあります。

日系社会あるいはブラジル社会の変容に伴い、現地の日系人が抱く日本との心理的距離感はその都度変化してきました。日系社会における芸能活動の実態そのものを知りたいというのももちろんですが、それらの活動がなぜ始まりどのように継続していったのか、その変遷を辿ることで、日系移民の日本に対する心理的距離感の変化を垣間見ることが出来るのではないかと考えています。

大風呂敷を広げがちなのが自分の悪いクセだと反省はしながらも、今回の滞在中はかなり広範な活動を行いました。専門調査はもちろん、毎年バレエ・演劇・音楽の公演を行っている弓場農場や、芸能活動を盛んに行っている県人会(沖縄県人会、鳥取県人会など)を訪れてインタビュー・資料調査を行ったのに加え、藤間流日本舞踊学校の踊り初めの会、宮城道雄の会の筝曲演奏会には舞台に立つ側として参加させていただきました。暖かくご指導くださった皆さま方に、改めて感謝申し上げます。


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros