2019年度通常総会のご報告
segunda-feira, 13 de maio de 2019

2019年度通常総会が3月28日、当研究所にて開催されました。総会の席上、2018年度事業報告および2019年度事業計画案が発表されましたので、ここでご紹介いたします。

2018年度事業報告書

1.創立50周年記念事業
1-1. 「多文化社会ブラジルにおける日系コミュニティの実態調査」
創立50周年記念事業として2016年4月に開始したプロジェクトで、約500ヵ所に及ぶフィールド調査およびデータバンクの構築と結果集計の第一段階を終了させた。結果報告会を開催(総領事館、県人会連合会等と共催)すると同時に、人文研サイト上に日系社会マップを公開。具体的な姿を新たな日系社会像を示すことができた。

1-2.人文研50年史刊行
2018年6月 「人文研史-半世紀の歩み-」刊行(300部)
執筆者:長尾直洋、高山儀子、松尾ネウザ
2018年6月15日に青森県人会で出版記念会を開催。

2.若手研究生育成事業
・研究生制度
[日本側]
小谷真千代 神戸大学博士後期課程 期間:2017年11月~2018年10月
 研究テーマ 下請け労働市場の地理的不均等発展に関する地理学的研究(日系ブラジル人労働者の出稼ぎを中心に)
[ブラジル側]
・Alfredo J.H.Garacia Neto 期間:2018年5月まで 
サンパウロ大学修士課程 研究テーマ:ポルトガル語資料に見る人文研の50年史 
・世良杏奈 インディアナ大学教育学部博士課程 期間:2018年6月~2019年3月 
 研究テーマ:移民としての日系ブラジル子弟教育

3.客員研究員・研究生の受入れ
・関谷弥生(大阪大学文学研究科博士後期課程演劇学専修3年 日本学術振興会特別研究員DC2) 
 期間:2018年8月~2019年2月
 研究テーマ:ブラジル日系社会で伝えられてきた芸能活動について
・柴田寛之(ニューヨーク市立大学博士課程)  期間:2018年12月26日~2019年1月28日
 研究テーマ:日本のブラジル人学校卒業者のブラジルへの帰国後の動向

4.出版事業
・人文研研究叢書第10号「ブラジル日系美術史」ポルトガル語版
2016年6月に刊行された田中慎二著「ブラジル日系美術史」のポルトガル語版の出版に向け、2017年7月に翻訳完了(翻訳者は田中詩穂、富松房子、松阪健児3氏)、2017年末に吉田エルネスト氏(エザーミ誌編集者)が編集を終え、2018年初めに出版社に人文研側の原稿を渡した。2019年初めに契約書を新たに作成し、二者(人文研とHucitec社)による署名が交わされる予定。

・人文研研究叢書第11号『アンドウ・ゼンパチ評伝(仮題)』
担当の古杉理事が執筆を終え、資金助成の依頼先を探すなど、出版の準備を進めている。

・人文研紀要『人文研』第8号
2017年に編集委員会(委員長 本山理事長、古杉理事、長尾直洋氏)を立ち上げ、2018年末に出版予定であったが、原稿が出そろったのが2019年1月末となり、出版は2019年に持ち越された。編集を細川理事が行い、出版はトッパンプレス社が担当する。印刷部数は200部。

5.企画・イベント
本年度開催された各種イベントは以下の通り。
[講演会](今昔物語、研究例会)
1月28日 小山昭朗「光を放った男達-ブラジル工業移住者の足跡-」  出席者 28名
3月1日  福島青史(国際交流基金サンパウロ文化センター日本語上級専門家)「言語政策理論から考える日系人のことばのデザイン」 出席者 23名
3月14日 鍛治 到(大阪成蹊大学マネジメント学部准教授)「日本で外国籍の親と暮らす子供の高校在学率について―2010年国勢調査データを用いた国籍間・都道府県間の比較」 出席者 14名

[研究会](長尾氏の意見により同月から研究会という名称に変わる。それ以前は勉強会であった。)
4月17日 大貫 純「サンパウロにおけるニューススタンドの分布-ニッケイ新聞とサンパウロ新聞を事例として-」 出席者 13名
5月29日 小谷真千代「日系ブラジル人の労働者の移動と出稼ぎ仲介業の拡大」  出席者12名
6月12日 長尾直洋「土人・カボクロ・日本人-ブラジル人種表象史日本人移民イメージに対する一考察」  出席者 14名
7月26日 アルフレッド・ネット「Jinmonken: 50anos de existência e tradição」  出席者9名
8月27日 長村裕佳子「ブラジル日系二世エリートの立候補と投票をめぐる心情と論理-戦後の民主化における1947年選挙を事例に-」  出席者10名
9月4日 ブルーノ・ハヤシ「『顔の見えない定住化』とコミュニティ形成-豊田市保見団地の事例から」  出席者11名
10月19日 人文研研究生の小谷真千代氏と世良杏奈氏がジャパンハウスで Japão Atual: Migração Internacional, Diversidade ètnica e Culturalをテーマに、カンピーナス大学の川村リリー教授と共に発表(ポ語)
11月28日 日系団体調査結果発表会をジャパンハウスにて開催。領事館と共催。
12月20日、21日 ジャパンハウスのシンポジューム「文化と言語のハイブリッド」で本山理事長(基調講演)、世良杏奈(出稼ぎの教育政策)、細川多美子(日系社会の実態と日系人の意識)の3名が発表。

6.資料の分類・整理
・人文研の手書き資料の整理のため、JICAのシニアボランティアとして、アーカイブ専門家の清水邦俊氏が7月に派遣された。資料保存に当り、中性紙を購入した。購入資金(R$4.600)の半額(R$2.300)がJICAサンパウロ支部より助成された。清水氏は2年間滞在予定。
・資料室の本の整理が行われておらず、乱雑であったため、USPの学生2名をアルバイトで雇い、整理を依頼した。

7.8月23日、人文研主催でドキュメンタリー映画“Behind the cove”の上映会をHotel Maksoud Plazaで行った。

8.人文研サイト
人文研が開催する講演会などのお知らせを始め、研究員によるエッセーなどをサイトを通じ広報した。
故中野順夫氏(人文研研究生)の「野菜生産販売概史」の最後を掲載。
2018年度中のアクセス数:25447ページ(前年比15.7%増)
新規に作成されたページ数:日本語:17ページ、ポ語:6ページ

9.2018年10月に松阪健児職員が退職、さらに11月に星大地事務局長が退職したため、11月4日より牧山恵氏を職員(身分Autônomo)として採用。

10.日本支部の活動
①サンパウロ本部への研究生派遣
 小谷真千代(2017年11月~2018年11月) 
②次期派遣研究生募集
 応募者なく、2019年も引き続き募集

11.田中慎二元理事死去
人文研の活動に大きく貢献した田中慎二元理事が、2018年9月7日、逝去。田中氏は画家として活動する傍ら、本の執筆も行い、人文研では2013年5月発行の『移民画家 半田知雄-その生涯』(人文研研究叢書第9号)、さらに2017年6月発行の『日系美術史』(人文研研究叢書第10号)を執筆した。各種記念誌や雑誌の編集にも関わり、イラストレーターとしても活躍し、人文研発行のほとんどの出版物の装丁を行った。2018年6月に人文研が出版した『人文研史 半世紀の歩み』の表紙デザインも担当したが、図らずも、それが同氏の最後の仕事となった。福岡県出身、享年83歳。


2019年度事業計画書

1.創立50周年記念事業
「多文化社会ブラジルにおける日系コミュニティの実態調査」
2018年度までに行った実地調査から得られたデータの補完(新たな調査地が見つかったり変更事項が生じるため)をし、より詳細、広範にわたるデータ分析を行う。必要または要請に応じてデータベースから結果の抽出を行い、日系社会に関する資料作りに役立てる。

2.「日系企業(地場企業)の歴史と現状」というテーマで調査プロジェクトを作ることを検討。
目的は人文研の運営資金の獲得と活動の活性化。調査対象は10年続いた企業。ベレンの山田商会、サンパウロの森田スーパーマーケット、柴田スーパーマーケット(モジ市)、PANCO、サドキン、コチア組合、JACTO、その他農業関連企業、消滅した企業も含む。責任者は本山理事長。

3.全米日系人博物館の研究部門との連携の可能性を図る。
3月末までブラジル側研究生として在籍している世良杏奈氏が同博物館の近隣に居住しているため、同氏が帰米後、訪ねてもらい、研究部門があるか、どのような研究者がいるか、運営資金の財源がどのようになっているかを調査してもらう。

4.若手研究者育成事業
研究生制度
[日本側]    今年度の応募者がなかったが、募集を継続。
[ブラジル側]  
・世良杏奈 インディアナ大学教育学部博士課程 期間:2018年6月~2019年3月
研究テーマ:移民としての日系ブラジル子弟教育について     
・Yin Qiao Hubei University China卒、現在: mestrado do programa de pós graduação em Língua, Literatura e Cultura Japonesa, na área de concentração de imigração, co foco no estudo comparativo entre a imigração chinesa e japonesa no Brasil ( desde Agosto 2017 - previsão de conclusão em Agosto de 2019) 期間:2019年4月~8月 
研究テーマ:O desenvolvimento do relacionamento civil entre os novos imigrantes chineses e imigrantes japoneses desde os anos 1970-um estudo de caso sobre a interação social no bairro Liberdade
  
5.客員研究員・研究生の受け入れ
・随時、外部よりの研究者を受け入れ、研究活動の支援を行っていく。
・大阪大学の「インターンシップ」制度による大学院生の受け入れ
 2019年7月~8月に大阪大学人間科学研究科大学院生 櫻木晴日(さくらぎはるか)氏の受け入れを決定。日本側責任者は山本晃輔氏(大阪大学未来戦略機構第五部門 未来共生イノベーター博士課程プログラム特任助教)。山本氏は日本支部の理事。

6.出版事業
1)紀要第8号 刊行は2019年3月~4月 出版社はトッパンプレス
2)人文研叢書第10号 「ブラジル日系美術史」のポ語版 
Hucitec社と2019年3月に新たな契約を交わした。日本語版で無断使用されていた写真について、著作権問題を解決後、本年半ばに出版を予定。出版社から戻った原稿を松尾ネウザ氏が見直し、最終原稿は久保ルシオ氏がチェックを行っている。
3)人文研叢書第11号 「アンドウ・ゼンパチ評伝」(仮題) 
古杉征己理事が昨年、執筆を終え、本年中に出版を予定。
4)人文研叢書第12号 「ブラジル日本語教育史」 モラレス松原礼子、末永サンドラ輝美共著として出版を予定。現在、両氏とも調査研究を進めている。

7.資料の収集と整理
・雑誌類の整理とデジタル登録が必要
・Colégio Sans Frontieres校から戦前の国語の教科書などの資料が寄贈される予定(末永サンドラ氏が仲介)。
・JICAシニアボランティア清水邦俊氏が資料の寄贈者ごとに整理した箱数が3月時点で74箱に達し
 た。

8.企画・イベント
①講演会(研究者によるアカデミックな研究や調査の成果を一般に発表)、②今昔物語(従来あまり取り上げて来なかった分野における移民の営為を発掘して一般に発表)、③研究会(若手研究生の研究テーマを中心に非公開で行う)を随時実施する。

9.公式ウエブサイト
人文研の活動についての情報やブラジル研究に関する記事の掲載を行い、更新が滞っている図書のデータベースを最新のものにし、雑誌などの逐次刊行物データベースの公開を目指す。

10.Facebook
人文研関連のイベント情報などを掲載し、一般の関心を高め、イベントへの参加を促す。

11.日本支部の活動
・2019年6月に小谷真千代氏のブラジルでの研究成果と長尾直洋氏による人文研史関連の講演を予定。
・2019年11月に細川理事による「日系コミュニティ調査」の発表会を予定。
・次期派遣研究生の募集を継続する。


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros