研究所所長田中洋典氏急逝
quinta-feira, 26 de novembro de 2009
追悼の辞
去る11月6日早朝、当研究所所長田中洋典氏が脳梗塞のため急逝した。享年76歳。文字通り青天の霹靂であり、痛恨の極みである。
田中氏は日伯両語に通じた達意のバイリンガルとして、専門の建築はいうに及ばず、日本文化や日系社会についての造詣も深く、そのキャリアを活かし、これまで県人会、文化協会、100周年記念協会、移民史料館、人文研などの要職にあって、一貫した文化活動に従事してきたこと、人も知る通りである。
今回、当研究所が本来の使命に立ち返り、本年度より、若手の研究者育成のため奨学制度を実施することに合わせ、長年不在だった所長に念願の田中氏を迎えることができたが、漸くこの10月に制度の発足を見るに至った矢先、こころざし半ばにして不帰の人となってしまったのは、これからの活躍が期待されていただけに、惜しみても余りある。
さらに、田中氏は移民史料館にて笠戸丸以来の戦前移民の乗船名簿に隈なく目を通し、その成果を、ブラジル経済報知に「戦前移民航海物語」と題して連載中でもあった。これは、肩肘張らない平易な文章で、航海中の移民の生活を中心に、当時の移民の背景や状況を探るという、ユニークな移民史ともなっている。遺稿となってしまったが、いずれその出版が望まれる。
われわれは彼の遺志を継ぐことが、彼に酬いる道と信じ、今後の研究所の発展に貢献する事を誓いたい。心から田中氏の冥福を祈る。