2017年度通常総会のご報告
sábado, 01 de abril de 2017

2017年度通常総会が3月28日、当研究所にて開催されました。総会の席上、2016年度事業報告および2017年度事業計画案が発表されましたので、ここでご紹介いたします。


2016年度事業報告書

1. 日伯修好120周年記念セミナー
日伯修好120周年を迎えた2015年度の事業として、2月22日(月)、FIESP本部にて開催された。テーマは”Intercâmbio Brasil-Japão em Perspectiva – Passado, Presente e Futuro das Relações Econômicas, Científicas e Culturais”(「日伯交流の展望;経済、科学、文化諸面における関係の過去、現在そして将来」)。FIESP(サンパウロ州工業連盟)との共催のもと、在サンパウロ日本総領事館後援で行われた。環境問題、二国間協力事業、学術交流、日系社会の貢献という4つの分野に関しそれぞれの識者を招き、今後の日伯交流について討議がなされた。150名以上の参加を得る盛会であった。

2. 創立50周年記念事業
本年中、以下のような進展があった。

1. ブラジル社会における日系コミュニティの活動状況と存在の影響調査
宮坂国人財団と日本財団より助成金(それぞれR$50.000と¥12.600.000-)を得て、サンパウロ州内および市内を中心に日系団体へのフィールドワークを開始した。調査員の募集、トレーニングを経て、実際の回答をもとに、調査票の調整、結果分析のための入力システムの調整などを行い、日系社会の存在感の把握を試みるべくより正確な情報収集に努めた。地方各地の団体同士の交流や団体存続に向けての問題点解決への模索などに通じる回答を得られている。

2. 人文研50年史・年表の刊行
人文研50年史・年表を作成に向け、日本語とポルトガル語による刊行を目指し、資料調査が行われた。刊行は2018年半ばが予定されている。
・日本語部門
人文研担当者による調査に加え、2016年7月にJICA青年ボランティアの長尾直洋氏が赴任し、より専門的な資料の分析や調査が行われるようになった。主として戦前の人文研の前身(ブーグレ会、無名会、土曜会、人文科学研究会)の資料を中心に調査が行われた。長尾氏は2年間(2016年7月~2018年6月)滞在する。
・ポルトガル語部門
2016年9月に人文研専任研究員としてAlfredo Jorge Hesse Garcia Neto氏(サンパウロ大学歴史学科修士課程)が採用され、本山理事長の指導の下、1965年以降に発行された人文研のポルトガル語の資料(議事録、事業活動報告書など)を中心に調査活動を行った。

3. 専任研究員枠の創設
3. 研究員制度の創設
(2018年3月27日年次総会にて名称改定)
ブラジル側枠の研究員として9月よりAlfredo Jorge Hesse Garcia Neto氏が「サンパウロ人文科学研究所の50年―その史的考察」をテーマに研究活動を開始した。また、日本側枠には10月より柴田寛之氏(NY市立大学大学院センター社会学研究科)が「ニッケイ・ブラジル人のトランスナショナルな繋がりの長期的変動」のテーマで研究をしている。

3. 日本支部
日本支部では以下の研究会が開催された。
 7月30日『実業家 平生釟三郎とブラジルー日伯経済文化交流構築の埋もれた偉業』栗田政彦氏(ANBEC事務局長 人文研日本支部理事)於甲南大学東京キャンパス
また、10月には本部へ柴田寛之氏を研究員として第一回の派遣を実現させた。

4. 若手研究者養成のための奨学制度
前期より研究活動を行ってきた2名の奨学生たちは、この3月に研究活動を終了し、第4期奨学生報告書にその研究成果が載せられることになっている。

そして、2009年より実施してきたこの制度を、当団体50周年記念事業として立ち上げた専任研究員制度へと引き継ぐ形を取ることが決定され、奨学生制度自体は今年度より廃止となった。

第二期奨学生たちの報告書が8月刊行された。第三期報告書も年末段階でほぼ完成し、印刷を待つのみとなっている。

現在この制度はサンヨー牧場、高岡マルセーロ氏、宮坂国人財団、山本勝造財団からの支援により運営されている。

5. 客員研究員・研究生の受入れ
今年度、客員研究員および研究生の受入れはなかった。

6. 出版事業
人文研研究叢書第10号「ブラジル日系美術史」
当研究所元理事田中慎二氏の執筆で同書は6月に刊行された。7月21日、県連会議室にて出版記念会が催された。

“A Presença Japonesa na América Latina”
2008年5月19~20日、Memorial da América Latinaにてブラジル日本移民百周年記念シンポジウム(コーディネーター:Shozo Motoyama)が開催された。その後、このシンポジウム参加者たちによる論文集が編纂されたが、様々な事情により出版がかなわずにいた。昨年度、宮坂国人財団の厚意により出版への事情が整い、当研究所がその引受先として8月に刊行された。

人文研研究叢書第11号「ブラジルにおける日系農業史」
本年一月より二年間の予定で中野順夫氏(ブラジル農業研究者)を嘱託研究員として迎え、「ブラジルにおける日系農業史」執筆のプロジェクトが開始された。4ヶ月ごとに中間報告書が提出されることになり、4月に「ブラジルのジュート栽培―日本人の果たした役割―」、8月に「サン・パウロ近郊における日本人野菜生産販売概史」が作成され、いずれもサイト上にて公開されている。ただし、残念なことに9月28日、不慮の事故により中野氏が亡くなられ、このプロジェクトは当面中断されることとなった。これまでの間、宮坂国人財団がこのプロジェクト運用のための助成を行った。

7. 企画・イベント
本年度開催された各種イベントは以下の通り。

1.  研究例会
11月「ブラジル人女性移住者と継承語教育」拝野寿美子氏(神奈川大学)
  「日本におけるブラジル人の子どもの教育達成」竹ノ下弘久氏(上智大学)

2. コロニア今昔物語
4月「着物とブラジル」吉積俊子氏(JICAシニアボランティア)

3. 勉強会
3月「源氏物語のもののあわれ」ペドロ・シュライバー氏(奨学生)
3月「16世紀における葡日関係」バルバラ・ピナ氏(奨学生)

8. 資料の分類・整理
今年度下記の方々より図書の寄贈があった。
高橋ジョー氏、ルネ・タグチ氏、矢野京子氏、プレジデンテ・プルデンテ文協、浅野森次氏(故人、未亡人ジョアーナ・サントリン氏が提供)、サント・アンドレ―福音ホーリネス教会、メアリー・タチバナ氏、中野順夫氏(故人)、宮尾進氏(故人)。

プ・プルデンテ文協より寄贈された資料は移民資料(文芸雑誌、個人資料)がほとんどであり、資料室に収蔵されることとなった。

3月13日に古本市を開催。売上は約R$5,500(純利益約R$4,500)だった。

宮尾、脇坂両顧問より寄贈された日本語以外の言語による図書はほぼすべて古本屋へ売却され、R$2,000以上の収入を得た。

また、名村裕子氏が9月に当研究所を訪れ、約二週間、資料の整理活動を行った。

9. 宮尾進顧問死去
元当研究所所長、現顧問だった宮尾進氏が10月30日に逝去された。埋葬は翌31日、コンゴーニャス墓地にて行われた。


2017年度事業計画書

1. 創立50周年記念事業
1. ブラジル社会における日系コミュニティの活動状況と存在の影響調査
2018年6月末までに当プロジェクトの結果分析報告書を作成するにあたり、2017年は約300団体を実際に訪ねてのフィールドワークに専念する。同時に、全国文協ガイド(仮)、文協マップ(サイト上)などを作るにあたって、コンピューター入力システムの構築を行なう。

2. 人文研50年史・年表の刊行
日本語部門
年前半から年央にかけて戦後の資料調査に力を入れ、関係者へのインタビューなどを行い、戦後の活動をまとめる。年後半から記念誌の記述を行い、出版に向けた準備をする。刊行は2018年5月を予定。
ポルトガル語部門
資料の調査を継続する傍ら、関連書籍を精読し、人文研の活動を歴史的に概観する。刊行予定は2018年9月。

2.奨学生制度の発展的解消に伴う若手研究生の育成
専任研究員制の実施
研究員制度の実施(2018年3月27日年次総会にて名称改定)
日本側 支部派遣研究生 柴田寛之NY市立大博士課程
 研究テーマ 移民のトランスナショナルの長期的変動 -日系ブラジル人の100年の歴史制度分析―
ブラジル側 本山理事長推薦 Alfredo J. H. Garcia Neto サンパウロ大学修士課程
 研究テーマ ポルトガル語資料に見る人文研の50年史

3. 日本支部の活動
勉強会、研究会、そして講演会の開催を計画している。また本部への研究者派遣にも従事する。

4. 客員研究員・研究生の受入れ 
白石香織 上智大博士前期課程 カンピーナス大留学生
 研究テーマ 戦前日本移民のホスト国の人びととの接触について

5. 出版事業
人文研研究叢書
 第10号 ブラジル日系美術史(ポ語翻訳)上半期出版予定
 第11号 アンドウ・ゼンパチ 古杉征己  年内完成予定
 第12号 ブラジル日系農業史 中野順夫 遺稿を編集する
 第13号 ブラジル日本語教育史 執筆者検討中
奨学生レポート 第3号および第4号
紀要第8号(編集作業、刊行は2018年3月予定)

6. 資・史料収集と整理
逐次刊行物の整理(必要に応じては修復・再製本)

7. 企画・イベント
本年度も当所主催による下記の発表会を随時実施する。

1) 研究例会
研究者によるアカデミックな研究や調査の成果を一般に発表する趣旨による。2月に「三島由紀夫のブラジル体験」(杉山欣也氏、金沢大学教授)を開催。

2) 今昔物語
従来あまり採りあげてこなかった分野における移民の営為を発掘して発表するもの。1月に移民史料館との共催で「水野龍展と私―その上を流れた時間と人びと」(大浦文雄氏、福博村会顧問)「カフエパウリスタに魅せられて」(若林あかね氏、映像作家)を開催。

3) 勉強会
若手研究生の研究テーマを中心に非公開で討論を行う趣旨による。

8. 公式ウェブサイト
『人文研ライブラリー』の継続、また昨年度行えなかった50周年記念事業の経過報告などを行う。


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros