2016年度通常総会のご報告
sexta-feira, 27 de maio de 2016

2016年度通常総会が3月23日、当研究所にて開催されました。総会の席上、2015年度事業報告および2016年度事業計画案が発表されましたので、ここでご紹介いたします。

2015年度事業報告書

1. 日伯修好120周年記念事業
 本年は日本ブラジル間の国交樹立より120周年の記念にあたる年であり、様々な団体が記念事業を企画した。当研究所においても在サンパウロ日本総領事館よりの支援のもと、ワークショップ「日系コミュニティの現状と展望」を10月16日、文協ビル5階県連会議室にて開催した。このワークショップは、本来12月に開催予定されていた記念シンポジウム「日伯交流の展望:経済、科学、文化諸面における関係の過去、現在そして将来(ポ語)」に先駆けるものとして計画され、以下にも記述する当研究所創立50周年記念事業の一つである日系コミュニティ実態調査がブラジル各地の日系団体関係者に周知認識されることを目的としたものである。サンパウロ市にある団体を含め、北はベレンから南はフロリアノポリスまでの日系15団体ほどが参加し、意見交換を行った。50名近い出席があった。

2. 創立50周年記念事業
 本年中、以下のような進展があった。

1. ブラジル社会における日系コミュニティの活動状況と存在の影響調査
  7月末に記者会見を開きこの活動についての広報を行った。その翌週、8月1、2日、マリリアとカフェランジアにおいてテスト調査を行い、主に設問事項の確定のための情報を得ることができた。一方、調査のための資金として8月にトヨタ財団、9月に日本財団、12月に宮坂国人財団へそれぞれ助成金の申請を行った。また専任調査員としてJICAへ青年ボランティア(2016年7月より2018年6月赴任)の要請も行った。

2. 人文研50年史・年表の刊行
  人文研刊行物の資料調査が地道に行われている。またこの活動に対してもJICA青年ボランティアの要請を行った。

3. 専任研究員制の創設
  ブラジル側枠の専任研究員として吉田ラファエル氏が4月より「日本移民の子弟教育」をテーマに研究活動を開始した。ただし、研究員個人の事情によりサンパウロ市よりの移転が決まり、残念ながら11月末をもって辞任した。その後、後任は任命されていない。また、日本側枠も適任者が見つからなかった。

3. 日本支部
 日本支部が本年度中に開催した研究会を以下に示す。
 第一回 3月7日『ジャーナリストが見たブラジル日系社会の勝ち組負け組抗争事件―被害者の立場からの一考察』名波正晴氏(共同通信社)於立教大学池袋キャンパス
 第二回 9月26日『1960年代におけるウジミナスの日系社員』長谷川伸氏(関西大学准教授)於海外移住と文化の交流センター

4. 若手研究者養成のための奨学制度
 前期研究活動を行った2名の奨学生たちが、今期も研究活動を継続した。奨学生と研究テーマは以下の通り。

バルバラ・アパレシーダ・アルベス・フェヘイラ・デ・カルバーリョ・ピナ(USP歴史科)
 “Relação entre Portugal e Japão nos séculos XVI e XVII e o impacto gerado na cultura e sociedade japonesa”(「16,17世紀における日葡関係史」)

ペドロ・シュライバー・モッタ・マルチンス・デ・バッホス(USP哲学科)
 (“もののあわれ”について)

 予定されていた第二期奨学生たちの報告書は、編集作業の遅れにより刊行が叶わなかった。
 現在この制度はサンヨー牧場、高岡マルセーロ氏、宮坂国人財団、山本勝造財団からの支援により運営されている。

5. 客員研究員・研究生の受入れ
 7月よりジャン・ムーラン・リヨン第三大学博士課程在籍のノーラ・ユールマ(Nora Juurmaa)氏を客員研究生として迎えている。研究テーマは“Poétique de l'immigration au Brésil à travers l'écriture autobiographique de Kiyotani Masuji(ブラジル日本移民詩学―清谷益次の自伝的作品を例に)”。一年間の滞在を予定している。

6. 企画・イベント
 本年度開催された各種イベントは以下の通り。

1.  研究例会
3月「窓としての短歌―ブラジル移民の『われ』とその表現」
松岡秀明氏(大阪大学招聘教授)

2. コロニア今昔物語
2月「サンバ、カーニバル、エスコーラ・デ・サンバってなに?」
細川多美子氏(当会理事)
4月「ロリータファッションとカワイイ文化の発信」
松田明美氏(ブラジルかわいい大使)
8月「老いへの道」吉岡黎明氏(前救済会会長)
9月「コチア青年がブラジル及び日系農業に果たしてきた役割」
黒木慧氏(コチア青年第一回生)
10月「翻訳から見た日本語の特質」後藤田怜子氏(翻訳家)
12月「ブラジル日本移民史料館の現状と展望」
山下リジア氏(移民史料館運営委員会副委員長)

3. 勉強会
2月「もののあわれ-『源氏物語玉の小櫛』に本居宣長が見出した物語文学の本質」
ペドロ・シュライバー氏(奨学生)
3月「16,17世紀日葡関係史」バルバラ・ピナ氏(奨学生)
6月「ブラジル邦字新聞における日系政治家の選挙関連記事とその読まれ方について」
長村裕佳子氏(社会学修士)
7月「1930年代の日本人移民子弟教育」
吉田ラファエル満氏(専任研究員)

6. 資料の分類・整理
 今年度下記の方々の遺族より図書の寄贈があった。
 山中三郎氏(バストス移住地草分け)、清谷益次氏(南伯農協広報部長、人文研顧問)。
 それ以外に脇坂当会顧問よりも個人蔵書から厖大な図書の寄贈があった。
 また、学習院大学より青木祐一氏(アーカイブス学専門)が9月に当研究所を訪問し、資料の整理活動を一週間行った。


2016年度事業計画書

1. 日伯修好120周年記念セミナー“Intercâmbio Brasil-Japão em Perspectiva - Passado, Presente e Futuro das Relações Econômicas, Científicas e Culturais”(日伯交流の展望:経済、科学、文化諸面における関係の過去、現在そして将来)
 昨年より計画が進んでいた当セミナーは12月になりFIESP(サンパウロ州工業連盟)との共催が決定し、在サンパウロ日本総領事館の後援のもと、2月22日(月)にFIESP本部で開催された。環境問題、二国間協力事業、学術交流、日系社会の貢献という4つの分野に関しそれぞれの識者を招き、今後の日伯交流について討議がなされた。150名以上の参加を得る盛会であった。

2. 創立50周年記念事業
 2015年に創立50周年を迎えたことから発案された記念事業を継続実行していく。

1. ブラジル社会における日系コミュニティの活動状況と存在の影響調査
 本年初めに宮坂国人財団と日本財団より助成決定の知らせを受け(それぞれR$50.000と¥12.600.000-本年度分)、予算面での目途がついたところで実際に調査を開始することとなる。本年度は主にサンパウロ市内、また州内の調査が計画されている。7月にはJICA青年ボランティアの赴任も予定され、本格的な調査へと進んでいくことになるであろう。

2. 人文研50年史・年表の刊行
 過去50年に亘る歩みを振り返り、人文研がこれまでめざしてきたもの、そしてそれを達成するために行なってきた事業などを再考することを目的として、ポルトガル語による年史、日本語による年表の作成を夫々計画している。こちらも7月にJICA青年ボランティアが赴任することになっている。

3. 専任研究員制度の実施
 昨年、この制度の第一号研究員が任命されたが、残念なことに中断の憂き目に遭った。後任を選定することは決して容易な環境にはないが、その可能性を探ることになる。日本支部では、Facebookでの宣伝が効果を上げ、すでに候補者が数名現れているので実現へと事を進めていく必要がある。

3. 若手研究者養成のための奨学生制度の継続
 前期よりの奨学生2名はこの3月に研究活動を終了し、4月以降新たな奨学生を募集することが決まっている。

4. 日本支部の活動
 正式な登録がなされてから3年目に入る日本支部は本年度、勉強会、研究会、そして講演会の定期開催を計画している。また上記の専任研究員の項でも述べた本部への研究者派遣にも従事する。

5. 客員研究員・研究生の受入れ 
 随時、外部よりの研究者を受入れ、研究活動の支援を行なっていく。

6. 出版事業
 本年度、出版が計画されているものは次の通り。
 • 第2期および第3期奨学生期末論文集
 • 田中慎二著「ブラジル日系美術の道程」(人文研叢書第10号)
 また、人文研叢書第11号として「ブラジルにおける日系農業史(仮題)」を2018年度に刊行を予定しており、それに向け2016年と17年の二年間、中野順夫氏(ブラジル農業研究者)に調査執筆を委嘱することとなった。この事業のために宮坂国人財団より助成金が支給されている。

7. 資・史料収集と整理
 2015年度中寄贈いただいた図書の整理登録作業を予定している。

8. 企画・イベント
 本年度も当所主催による下記の発表会を随時実施する。

1) 研究例会
 研究者によるアカデミックな研究や調査の成果を一般に発表する趣旨による。

2) 今昔物語
 従来あまり採りあげてこなかった分野における移民の営為を発掘して発表するもの。

3) 勉強会
 若手研究生の研究テーマを中心に非公開で討論を行う趣旨による。本年第一回は3月10日に開かれた。(ペドロ・シュライバー氏「現代的源氏物語鑑賞」)

8. 公式ウェブサイト
 サイト開設以来同じサーバーを利用してきたが、ここに来て日本よりのアクセスに大きな障害が続き、状況改善を依頼したものの解決に至っていない。そういった状況を鑑み、サーバーの移行をなるべく早く行うことを決定した。その他コンテンツとしては、サイトにおいての『人文研ライブラリー』継続、またFacebookのより有効な活用についても考えていきたい。特に、50周年記念事業などの経過報告もこれらの媒体を積極的に用いていく必要がある。


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros