異端審問の女たち(2)
segunda-feira, 14 de janeiro de 2008

(2)ルイザ・ダ・シルバ・ソアレス
 当時どういうことが異端とみなされたのかというと、ユダヤ教などの異教、ホモ・レズなどの同性愛、肛門性交、獣姦、妖術、魔術などです。

 オリンダ生まれの奴隷ルイザは、魔術を使うというので異端審問にかけられました。何人もの人間に買われたり、売られたりしていますが、最後にはミナスの軍人ジョゼ・デ・シルバに買われマリアナに住んでいました。奴隷は人権がありませんから、主人の気分しだいで鞭打ちを受けるのが日常茶飯事です。

 40 歳もすぎていたあるとき、女主人が打ち据えてやろうと、鞭をふりあげたところ、腕に激痛が走りました。奴隷を抱える女主人というのは日頃何もしないので、急に腕を振り上げたことで靱帯がおかしくなったのではないかと思われますが、彼女はルイザに魔法をかけられたと考えました。

 以後、農園内におきるすべての災難、不測の事故、病気は魔法使いと呼ばれるようになったルイザのせいにされました。殴る蹴る、手枷足枷の虐待が受けつづけられます。女主人が病気になったときもそうでした。腕に激痛が走ったのは奴隷が魔法をかけたと思う人間ですから、のろわれて病気になったと考えたわけです。悪い人間はどこにでも、いつの世にでもいるのですが、ルイザと女主人は相性が悪かったのではないかと思います。当時としては女主人もそれほど極端に悪い人間ではなく常識内でしょうから。波長の合う合わないは、性には関係なくありますからね。相性の悪いのが嫁姑の関係だったりしたら、これはもう悲劇です。

 女主人は叔父に頼んでルイザを魔術を駆使したと密告、1742年、異端審問のためにリズボンに送られ裁判を受けます。

 その席上、主人側からうけた拷問や地元ミナスの教会から受けた非難や虐待を洗いざま述べました。満を喫して明かされたその拷問・虐待のすさまじさは、審問官をも驚かしたほど。ルイザは強靭な精神の持ち主。以後7 年にわたった裁判にも耐え、最終的には自由を勝ちとります。もうすでに十分償いをしているというので審議は打ち切られ、釈放されました。異端審問はずいぶん無実の人間を裁いていますが、このルイザに関しては温情的です。まあ、それほど、ブラジルで受けた拷問が非人間的であったという証にもなるわけですが。

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サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros