異端審問の女たち(3)
segunda-feira, 14 de janeiro de 2008

(3)パウラ・デ・セケイラ
 信仰はともかく、性癖に関しては密室内で行われるものなので証拠固めも難しい。「おかしな息遣いがしているから、もしかして肛門性交では・・・」などというタレ込みで捕縛されるという状況だったようです。

 同性愛の罪で第一回の異端審問会議にかけられた女性のリストがあります。『A coisa obscura: Mulher, sodomia e inquisicao no Brasil』という本ですが、30人ほどの女性の名前と出生地、肌の色、現住所、婚姻、夫の職業、パトナーの氏名、関係した期間、刑罰が表になっています。その行為がなされた期間も1年から36年までいろいろ。男どもがセッセとマメルッコ作りに精を出していたとき。奥さんたちは放っておかれたからか?などとの憶測が成り立ちます。

 そのうちのひとり。パウラ・デ・セケイラは夫が王室農場の経理士。その罪状の一つに禁止書を読んだことが挙げられています。「ダイアナ」という16 世紀に刊行されたスペイン語の宗教ロマンスがありますが、レスビアン描写があるというので、教会が意義を申し立て、当時禁止書になっていました。糾弾者はバルタザル・ミランダという神父。聖職者が何人も隠し子を持っていた時代に何よ、と思いますが、それを熱読し、さらに、カンチーナで「ダイアナ」を歌わせたというので神父の逆鱗に触れ、告訴されたのです。

 その後の自供によると、20年前リスボンに在住中は、夫の愛を逃さないために黒魔術を使ったこともあり、ブラジルにきてからは、イザベル・ロイスというサルバドルに住んでいた魔術使いにも教わったといいます。黒魔術のシンボル「獣の足」の絵を門口にはってあるという密告もあがっていました。

 19世紀に入ってからですら、ブラジルでは娘たちには学問を勧めませんでした。1590年代で読み書きができることはまさに異端なのでした。

 審問にも堂々と答え、「・・・アレ、読んだけど、すばらしかったわ。読むことが何故いけないんです」と反問し、それが審問官の心情を害してもいます。本を読んだことで訴えられたパウラ・デ・セケイラは、いまならインテリ階級。

 結局、このときにパウラはパートナーの名前を漏らしてしまい、後述のフェリッペ・デ・ソウザの逮捕につながります。30名のリストの中で、読み書きができたのが、パウラ・デ・セケイラとフェリッペ・デ・ソウザとカタリナ・クワレズマの三人でした。

 席上、同性愛を否定するように諭されたサトウ園主夫人のカタリナ・クワレズマは「いつも、正直に真実を伝えよという神父さんがそんなことを言うのはおかしいじゃありませんか」と反発しています。

 読み書きができる開かれた女性たちだからこそ、因習に囚われずにわが道を進んだともいえます。

この連載についての問い合わせは、michiyonaka@yahoo.co.jpまで。


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros