2010年度通常総会のご報告
quinta-feira, 08 de abril de 2010

3月25日、当研究所内にて2010年度通常総会が開催されました。そこにおいて、2009年度事業・会計報告ならびに2010年度の事業・会計計画が発表されました。また、新しい理事会も選出されました。

以下にその一部をご紹介いたします。


2009年度事業報告書

田中洋典所長の急逝
 当研究所の所長としてその重責を果たしていた田中洋典氏が、11月6日心臓麻痺のため急逝。 (「研究所所長田中洋典氏急逝」)

1.奨学生事業の発足
  長い間の懸案とされた研究者養成の基礎となる奨学生制度は、本年度より実行に移され、篤志家の寄付の増加に相まって漸く具体化の運びとなった。
  本奨学生制度は、篤志家より毎月最低給与分の寄付を仰ぎ、それを奨学生に資金として支給するもので、奨学生の研究テーマは、当研究所の目的である①日本人移民の歴史、②日系社会の諸相、③ブラジルと日本の交流、のいずれかを取り扱うものとなっている。
  厳選された4名の奨学生のテーマもこれに準じている。
1) 本事業に協力した法人・個人
  サンヨー牧場、宮坂基金、続木善夫(二名分)、高岡マルセロ
2) 指導教官
  本山省三  当研究所理事長  USP歴史科教授  
  菊地保夫    同副理事長  社会学専攻  
  森 幸一     常任理事  USP文学部教授
3) 奨学生氏名とそれぞれの研究テーマ
  小林ブルーナ(UNESP農学部)イグアッペ周辺における日系農業技術
  山田エドワルド(USP歴史科) 日伯関係における人種偏見について
  吉田  満  (  同  ) 日本の移民政策についての一考察
  柴田 夏美  (  同  ) ブラジル移民政策に見る日本の近代化

2.出版事業
 紀要 第七号の刊行  (「紀要『人文研』No.7発刊のお知らせ」)
 発行部数300部は、全会員に無償で配布すると共に、日本側の主要な移民研究者やその機関にも進呈された。

3.史料の分類・整理とデーターベース化
  2007年7月、JICA青年ボランティアとして当研究所に派遣された横尾悦子司書は、最終年に当たる本年6月までの満二年間に及ぶ積極的な勤務により、本来業務である日本語による全移民史料(雑誌を含む)をはじめ、さらに一般日本語図書をも分類・登録・データーベース化するという作業を完了した。
データーベース化された史料・図書は次の通りである。
① 日本語による移民史料・・・4.084冊
② 日本語による一般図書・・・1.841冊 合計5.925冊
(「蔵書検索」)

4.研究例会
 アカデミックな研究の成果を一般に発表する趣旨で昨年度から復活した研究例会は、本年度は下記の要領で実施された。
第4回 2月9日 「聖州近郊農業の方向性について」 田中規子
第5回 7月31日 「インディオの世界を垣間見て」 細川多美子
     (「第五回研究例会 細川多美子氏講演開催報告」)
第6回 9月17日 「農業と食と健康」       続木善夫
     (「第六回研究例会 続木善夫氏講演「農業と食、健康を考える」開催報告」)

5.コロニア今昔物語(新規)
本年度よりはじめた本企画は、従来、研究例会ではあまり採りあげてこなかった分野における移民の営為を発掘し記録に残すもので、下記の要領で実施された。
第1回 6月30日 「日本語放送の思い出」石崎矩之
     (「第一回「コロニア今昔物語」:『日本語放送と映画の思い出』(発表者=石﨑矩之)」
    「『コロニア今昔物語』第一回音声ハイライト」)
第2回 8月28日 「私と手品」津野豪臣
     (「『今昔物語』第二回津野豪臣氏によるお話し開催報告」)
第3回 10月20日 「コロニア文学における鈴木南樹、古野菊生、武本由夫の存在」安良田済
     (「第三回『コロニア今昔物語』開催報告」)

6.公開座談会
8月21日 「外から見た日系文学」ゲスト 細川周平(国際日本文化研究センター教授)


2010年度事業計画案                     

1.研究員育成のための奨学生制度の拡充
 昨年度末、ようやく4名の奨学生を選考することによって発足した本事業は、指導教官と4名の奨学生との月一回の指導面談をはじめとする諸連絡・会合を密にし、奨学生の研究テーマをフォローするほか、奨学生には月次レポートの提出、人文研への週一定時間の研究出頭を義務付けることにより、その成果を着実に積み上げていきたい。
 なお、奨学基金の拡充にはさらに篤志家の寄付が不可欠なところから、引き続き協力要請の運動も続けるつもりである。

2. 出版事業
1)「人文研叢書」の刊行
  2002年度より、日本移民百周年を記念して企画・編集された本叢書は、すでに第7号まで刊行されているが、本年度は引き続き下記の刊行を予定している。
  *叢書第7号 ブラジル日系コロニア文芸(下巻)の別冊
           コロニアの詩文学      大浦文雄、ルネ・田口
  *第8号 ブラジルの日本移民史(上巻)(ポ語)     本山省三
  計画中のもの
  * ブラジル日系絵画史
  * ブラジル日本語教育史
2)田中洋典 「戦前移民航海物語り」
  前所長の遺稿となったものであるが、移民船における移民の生活を中心に、その背景となった当時の移民事情から配耕された移住地の実情までを採りあげたユニークな物語となっており、移民史の一端を伝える史料として刊行を予定している。
3)奨学生の研究レポート

3.移民史料・図書の収集と整備
  すでにデーターベース化された移民史料は、当研究所のサイトに公開されて、日本側の図書館や研究機関からの照会が急増しており、その価値が内外の研究者から評価されるようになった。 
  現在、当研究所には未整理の外国語図書約3千冊を有しているが、本年度からは松阪職員が担当者となり、このデーターベース化に取り組む他、新たな史料・図書の収集をはじめ、その分類・登録・データーベース化・公開などの管理を一層強化していくことにする。

4.各種の発表会
  本年度も当研究所主催による下記の発表会を随時実施する。

1)第7回研究例会
   3回を実施した昨年度に引き続き、今年度はすでに1回目として、下記のテーマと要領で実施した。
  日時 2010年2月25日 午後7時  
  場所 文協  1階 小会議室
  講師 深沢正雪 ニッケイ新聞編集長
  テーマ 「これからの日系社会」
  (第六回研究例会 深沢正雪氏講演「これからの日系社会」開催報告)

2)コロニア今昔物語(予定)
   第4回 「肖像写真からみたコロニア」 松本浩治
   第5回 「戦後邦字新聞の創刊の頃」  水野昌之


新理事会 任期2年(10年4月より12年3月まで)

顧問        脇坂 勝則
顧問        宮尾 進
顧問        清谷 益次

理事長       本山 省三
副理事長     菊地 保夫
第一常任理事  鈴木 正威 (所長兼任)
第二常任理事  田中 慎二
第一会計理事  古庄 雄二郎
第二会計理事  栗原 猛 (新人)
理事(順不同)  宮下 茂 (新人)
理事       長嶺 マリウダ
理事       高橋 浄 (新人)
理事       細川 多美子
理事       古杉 征己 (新人)

監査役 任期1年(10年4月より11年3月まで)

(正)  辻哲三、森脇礼之、丹羽義和
(補欠) トッパン印刷、山本商会、フォノマギ書店


以上


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros